クローズアップ103期 最終回

連載『クローズアップ103期』の最終回です。

最終回というと格好が良すぎるので「番外編」と銘打つ方が相応かもしれません。最後まで筆者の与太話にお付き合いいただけますと幸いです。

>>前回の記事はコチラのリンクよりご確認ください<<

謝辞

発表資料より抜粋

まとめに入る前に謝意を表したいと思います。

イベントでも一応お話させてもらいましたが、謝辞が11月に入ってしまって申し訳ありません。

もし、開発ブログを書いてくださっている人がいなかったら、動画を投稿してくださっている人がいなかったら、103期生は、登壇はおろか卒業制作を完成させることすらできていなかったかもしれません。

もし、SNSで反応してくれる人がいなかったら、学習アプリ作成会がなかったら、筆者は継続してPower Platformに触れることはなかったかもしれません。その意味では、皆さんも今回のイベントの立役者だと思っています。

登壇者の103期生も含め、皆さまがいなかったらこのイベントは3日に渡って開催されなかったと思います。心よりありがとうございました。

103期を振り返る

ある103期生によるまとめ

さて、まとめ…と言っても、このスライドに集約されているように思います。

103期生も筆者も、色々な失敗を繰り返しながら学習を深めて参りました。技術を学習するには継続学習が必要で、その継続学習には健康、探求心、発想力、失敗力が必要不可欠です。

健康がなければ長続きしませんし、探求心がなければ学びを進められません。発想力がなければ物事に対応する力を養えませんし、失敗を重ねなければ「引き出し」は増えません。

また、人脈は、こういった継続学習に付随する形で広がっていきます。この人脈は「質疑応答」や「コミュニティ活動」で広がっていく性質のもので、そこではコミュニケーション力や思いやりなども自然と身に付いていきます。

振り返ると、筆者が何か103期生に教えたということはなく、103期生との時間を過ごして何かを教えていただいたことの方が多かったです。自分が努力して身に付けた実力というよりも、この100日間を通して色々なことを学ばせてもらっている内に、自然と「人の輪」が大きくなっていました。

広報という仕事を通して皆さんの「良さ」を伝えたり、コミュニティ活動として学習支援を行ったり、この半年間で色々なことに取り組んで参りましたが、教室にいる時間が何よりの学びでした。

市民開発者養成の課題

とりわけ「市民開発者はローコード・ノーコードツールを使って開発する人ではない」ということは大きな学びだったと振り返ります。それと同時に、理想と現実のギャップに戸惑ったのを覚えています。その戸惑いと解決に向けた取り組みを今回の発表にまとめました。

理想
現実

市民開発者とは、ビジネスにおいて最適なシステムを提案し、開発を行う人材をいいます。ビジネスの目標を完全に理解し、それに基づき必要なシステムやサービスを提案して作り上げていく開発者を指しており、DX化を推進していく上で欠かせない人材であると云えます。

しかし、用語の定義は飲み込めたものの、市民開発者を世に輩出したいと考えている方々の思惑と、市民開発者を目指そうとする学習者の大部分がIT未経験者であることの間に溝が生じているような気がしました。

市民開発者の普及・浸透には、この理想と現実の差を縮められるような工夫が必要だと感じています。現状の全てを把握しているわけではないものの、筆者の知っている範囲においては初学者を突き放し過ぎているように思います。

現在、リスキリングとしてITを学ぶ初学者は、言うまでもなく、IT知識を有していない人々であるといます。喩えるなら、泳ぎを知らない赤ん坊を25mプールに放り込んで「ジタバタしていればいつか泳げるようになるよ」と言っているような感じでしょうか。

この記事を読んでいる方々であれば、ジタバタしていればいずれ泳げるようにはなると思いますが、より良質な泳ぎ手を(効率よく)育てようと思ったら、まずは水が怖いものでないことを知ってもらい、足が届く場所で泳ぐ練習をしてからジタバタさせた方が良いはずです。

かなり高度なことが要求されていますが「自由にやってみたら」という回答が、かえって学習者の足枷になっているようにも思えてきます。

DX化の波を受けて船に乗り込み、舵を取ったものの、船をどの方向へと進めたら良いのかが誰も分かっていない状態です。それは筆者も例外ではありません。

最終的には独習が必要不可欠なのですが、そこに至るまでの水先案内人が必要だと感じています。そこで、自分なりの試行錯誤を繰り返していくのも悪くないと考えるに至りました。

もう少しだけ未経験者に歩み寄りたい

業務担当者である市民開発者が、通常業務に追われながら、背景知識のない状態からITリテラシーやプログラミング言語を学習しようとなると膨大な努力量を要します。英語や数学に抵抗があれば、なおのこと学習は大変です。

努力量に関しては、その負担を軽減するためにMicrosoft Power Platformなどのローコード・ノーコードツールを学習する人が多いのですが、そのローコード・ノーコードツールでさえも簡単には取りかかれない…といった光景を実際に目の当たりにしました。

Power Platformに関しては「以前と比べて学習環境は飛躍的に良くなった」と先駆者からは伺っていますが、恐縮ながら、まだまだ改良の余地は残されています。

YouTubeには解説動画がたくさん投稿されていますし、インターネット上には先駆者によって書かれた記事がたくさんあります。書店に足を運べば多くの参考書が手に入りますし、コミュニティ活動も活発に行われています(それに、本も動画もコミュニティも楽しいものばかりです)

ところが、これらの良質な資料や環境が用意されていながらも、IT未経験者にとっては高い壁となっています。ある程度学習が進んでいる我々だから理解しやすい説明なのであって、彼らに対しては段階的に説明を理解できるようにサポートする必要がありそうです。

その一方で「そこまでする必要はない」という意見もあるはずです。今の環境のままでも自分なりに調べて工夫しながら継続的に学習を続けて業務アプリを作れるようになっている人がいるからです。

筆者は、プログラミングではなく語学(教育)で実感していることがありますが、何でもかんでも「教えてもらおう」と考えている内は上達が見込めません。そこまで手をかける必要がないというのも至極正論だと思います。

しかし、学習というものは「理解できているものを土台に、学習対象の理解や応用を試みる」ことをいう語であり、その結果、学習者の行動に変化をもたらすものです。現状、その土台となるものが一部の初学者にとっては大きな負荷がかかっており、行動の変化を促し難くなっていることも考えられます。

例えば、ある関数の説明に「変数」や「配列」が加えられていては、学習者に対して二倍、三倍の負荷がかかってしまうことになります。彼らがその関数の説明を理解するためには「変数」や「配列」が理解できていなければなりません。

変数や配列を知っている学習者であれば有効な解説になり得ます。現時点では筆者もお世話になっている良質な情報が至る所に出回っています。

しかし、これらを知らない学習者に対しては、可能な限り1つに集中できるように、他の学習項目は先回りしてケアしておくことが肝要です。

時には「自分で調べようよ」や「手を動かしてみましたか」や「できるようになるまで考えようよ」という冷たさも指導には必要ですが、もう少しだけ「勉強したい」という人のために配慮があっても良いように思います。

繰り返しますが、学ぶ側にも責任はあります。手放しに口を開けてエサを待っているのはご法度です。しかし、できるようになりたいと考えて努力している人が挫折しにくいように考えることも、市民開発者養成に欠かせないと考えています。

教材を作ってみよう

以上の問題意識から、次期の市民開発者養成に向けて、より取り組みやすい教材を用意したいと考えるようになりました。

以下のモジュール式教材では、学習のレベルを下げるという消極的な発想ではなく、学習の負荷を小さくする工夫を意識的に施しています。

対象のローコードツールはPower Appsで、既存の学習教材、動画、そしてDocs(現:Learn)を活用することを前提に、解説よりも「使いどころ」や「Power Appsの動き」が分かるような教材にできればと考えています。

PAP Builderと名付けました

教材といっても、筆者が「自分だったらこの手順で教えるだろうな」というイメージを主軸に、趣味で色んな書籍やブログを読みながらまとめている学習ノートのようなもので、書店に並べられるような質の高いものではありません。

意識しているのは「前に学習した内容が次の学習でも活かされる」ということで、所謂「とりあえず手を動かしながら学習を進められる」ように執筆しています。これを挟むことによって「自動生成からアプリを作る」という教え方が学習者に入りやすくなるはずです。

細かい説明は、筆者が間違いを教えかねないので可能な限り省いています。説明を理解することよりも、パーツを組み合わせるような感覚で学習を進められるように構成し、専門家が監修している入門書や動画教材などに誘導したいと思っています(参考文献も用意しています)

本稿の執筆時点では4章をまとめているところです。
全部で多くても7章から10章以内に収めるつもりで取り組んでいます。
読者の存在は意識しつつ、自分用の整理の場として完成まで気長に楽しむつもりでいます。

まとめ

少し前にやまさんが「JPPC2022の登壇・運営後期」ということで記事を書かれていました

彼の言葉をお借りして強調したいのですが、このJPAUG広島は、あくまでもビットゼミの訓練生と、コミュニティのメンバーと、Power Platformを愛する人々に集まっていただいて開催となったイベントであり、登壇者、運営・サポーターはボランティアです。

何度も同じ話を繰り返しますが、皆さんがいなかったら、このイベントは最初から成立していませんでした。会場の運営と登壇は本当に多くの方々に助けられたと認識しております。

遠い昔の記憶のようで、もう何をやっていたのかを思い出すことができませんが、イベント終了後には張り詰めた緊張の糸が切れ、心地よい疲労感を抱いたことは覚えています。

重ね々々、ありがとうございました。

それでは、引き続きビットゼミをよろしくお願いします。
また、ビットゼミを修了した市民開発者の卵たちの成長を見守っていただけますと幸いです。

隅田 智尋, a.k.a. kuro.

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