DXをビジネス変革や組織変革と捉えると、ビジョンや方向性、推進の方法や体制はその組織ごとにベストな形があるはずです。
教室には現役のDXデザイナーの方々に多く登壇をいただきました。少しずつまとめを記事にしていきたいと思います。
昨年11月1日に、株式会社フジワラテクノアート様にて、DX推進委員長としてDXを推進されている頼様にご登壇をいただきました。
同社は、2022年度に【日本DX大賞 中小規模法人部門 「大賞」 】を受賞され、2023年度の【経済産業省 DX セレクション「グランプリ」】を受賞されています。
未だ道半ばとのご認識ではありましたが、これまでどのようなDX推進をなされたのか?
その成功要因を学ぶ時間となりました。
まずは目的から!
まず最初にお話をされたのが、ITやデジタルのお話ではなく、創業から90年あまりで醸造機械のトップメーカーとして発展してこられた同社のミッションやビジョンでした。
自社の技術や価値を再定義し、2050年の未来を見据えた、「微生物インダストリーの共創」(醸造分野で培った、微生物のチカラを高度に利用するものづくりを多様なパートナーと共創する)という開発ビジョン2050を掲げられました。
ビジョン達成を目的としてビジネスと組織をトランスフォーメーションをしていく。
デジタル技術はその手段として重要戦略に組み込まれています。
推進体制としては、①新たな価値を創造する開発体制と、②フルオーダーメイドのものづくり高度化を目指し、それぞれに委員会を設定しておられ、DX推進委員会もその1つです。
DXの推進体制
DX推進委員会はダイバーシティを重視され、各部門を横断して多様なメンバーを選出して、社内システムの内製化に向けて話し合いを重ねたそうです。
各部門の業務フローをつないで視覚化していくと、畳2枚分の屏風絵になったそうです💦
頼様のDX推進に対する思いがのっかったコンテンツですね。
その屏風絵ををコピー機の前に張り出されたそうで、そこを通る方やコピーを取られる方の目に日常的に触れ、DX推進に対する本気度が伝わったものと思います。
また、こうした視覚化された資料を目にされる方々もそれについて考えたり、話題にされたりすることが増えていったことは想像に難くありません。
DX推進の大きな障壁となるのが、組織全体を巻き込む難しさだとよく聞きますが、人の心を動かすのはやはり人の思いの強さなのだと改めて思いました。
DX推進の成果
その結果として得られた多くの達成事項を教えていただきました。
・業務プロセス改善、属人化解消、原価、進捗のリアルタイム可視化
・調達業務効率化と紙90%削減
・棚卸業務効率化 棚卸作業にかかる時間︓2週間→1 日程度に短縮
・製品検査表、輸出用リスト作成時間 30%短縮
・引合い案件及び案件進捗可視化
・図面検索時間の短縮
・RPA による月 30 時間程度の事務作業削減
・社員の成長を支援し、多角的でより適正な評価につながる人財育成
・杜氏の麹づくりをサポートし、酒造りの高度な技術伝承に貢献する AI システムを開発
・サプライチェーンを含めたセキュリティ教育、協力体制構築等
・社内デジタル人財の育成
・DX への挑戦が持続的に行える体制と仕組みの構築
加えて「社員のマインドが未来志向に変化」という、DXの目的である組織変革が起きている手ごたえを大きな成果としてお話されました。
小さな成功事例を重ねたり、外部からの受賞などで評価されたりしたことでよい循環ができ、社内のデジタル人材も増加しているそうです。
フジワラテクノアート様での成功要因
DX推進に当たっては、①デジタル人材不足の壁、②DX対象を選定する壁、③習慣や前例踏襲といった文化の壁、④部門の壁、⑤心理的な壁があったとのことでした。
それを超えていくことができた要因を多くお話をいただきました。シンプルにまとめると以下のようなものになるかと考えます。
①経営層のレイヤー
・経営者や役員がミッションやビジョンを示し、担当者らがしっかり共感する。
・目指すべき姿と現状とのギャップを示し、実現に向けたロードマップを示す。
・DXに懐疑的な方にも、ミッションやビジョンを根気強く示す。
②DX推進担当者のレイヤー
・メンバーが主体性をもってDXに取り組む支援をする。義務感よりも楽しんで。
・成功事例を積み上げながら達成感を共有して、段階的に進めていく。
・DX大賞や助成金採択など、外部から評価をいただける機会も効果的に利用する。
ツールの導入だけでは終わらないDXですから、D(デジタル)は手段であって、X(トランスフォーメーション:変革)が目的ですよね。
そのトランスフォーメーション(変革)も、ビジョンやミッション達成のための手段と捉えることもできますね。一緒に遠くを見ながら進めていくことが大事ですね。
あくまでフジワラテクノアート様でのDX推進における成功要因ではありますが、ミッションやビジョンの共有と、どこまでも担当者の本気が大切だと感じた時間でした。
引き続き、「自分」と「世界」に「沢山」の「発見」をご一緒しましょう!