105期生も最初のグループワークで「DX時代の充実した職業人生」をテーマとして話し合い、5月15日(月)から17日(水)の3日間の6時限目に、それぞれの発表を行いました。
今回は、17日(水)に発表されたトリのチームの発表内容について記事にしました。
チーム「ハニーズ」の「【実録】DXで掴む幸せの秘訣!!!」
発表内容も発表方法も斬新で、かといって奇をてらうでもなく、クオリティも高く、最後まで飽きさせないパフォーマンスでした。見る人も演る人も楽しんだ時間だったと思います。
主な登場人物2人による台詞のみの構成で物語が作られており、そこにワークの目的となるDXやユーザーとしての留意点などがしっかり盛り込んでありました。
そのセリフ回しも、Wordの音声読み上げ機能を使って再生させていくというもので、Audible(Amazonのオーディオブック)さながらでした。
直接的な事柄ではなく、物語を通じて「伝える」手法には、情景が思い浮かんだり、登場人物への感情移入などもあったりして、多くの情報を伝えるものだと勉強になりました。
<<録音データを入手したらぶら下げるかもです。>>
1.物語の脚本
優れたAI機能が搭載された犬型ロボットが、田舎に移住した冴えないご主人様を、問題解決のためのデジタルテクノロジーやそれを使う上での留意点を授けながら助けるストーリーです。
物語への導入
-ウィ~ン(ロボットの効果音)-
ビットゼミのみんな?こんにちはこぶ。
これから、チームハニーズのみんなと一緒に、発表をしていくこぶよ。
僕がだれかって?
僕の名前は、こぶこぶ。
2017年に、ビット博士に発明されたアンドロイド柴犬なんだこぶ。
博士の技術力はとってもすごくて、歴史上の出来事は概ねインプットされているこぶ。
でも、博士は、世界を知りすぎてしまって、政府に連れ去られてしまったこぶよ。
そんなときに出会ったのが、冴えないご主人なんだこぶ。
ご主人は世間を知らなさすぎて、とにかくダメダメ!!
僕とご主人が出会った2023年は、多様性の過渡期なんだこぶ。
社会、経済、地球環境、そしてパートナーシップを軸に、多様性が急速に拡大した時代なんだこぶ。
今日は、ご主人の人生の物語を、みんなに聞いてほしいこぶよ。
それじゃぁ、さっそく物語、スタートこぶ!!
本論:「Situation」
-ウィ~ン(ロボットの効果音)-
ただいま!
こぶこぶ、聞いて?
僕、今日会社を辞めてきたんだ!
一緒にこの実家を出て、田舎暮らしをしよう。
収入なら大丈夫!
のんびり農業をしながら、農業インスタグラマーになるんだ。
ねっ!?すごく素敵なアイデアでしょ?
地方に移住することが悪いとわいわないこぶ。
だけどご主人みたいに一部の情報に流されて後先を考えずに場当たり的に決断をするのはあまりに軽薄だこぶ。
流行り言葉に流されるのではなくて、君がみた地方移住をお勧めするYouTuberだって、地方自治体から依頼を受けて、案件で地方移住のPRをしているインフルエンサーかもしれないこぶ。
地方自治体だって自分のところをアピールするためにお金を使って情報を操作することだってあるんだこぶ。
都会の人間関係に疲れたと思っているのかもしれないけど、都会のドライな人間関係に対して、田舎はとってもウエットな人間関係を受け入れなければならないこぶ。
ウェットな人間関係がマッチする人もいるし、それがトラブルの原因になる人もいるこぶ。
実際に「りんの田舎暮らし」という北海道の村に移住した、りんが、日常動画を投稿するチャンネルでは、2023年の3月24日の動画で村を離れて知床に避難していると明かしたこぶ。
「村の男性から“2人で会いたい”と言われて、お誘いを断れば断るほど、私の悪いうわさが増えていきました」といい、また「“村の自宅が数人の男性に襲われる”と情報提供がありました」と告白していたこぶよ。
このように、表面的な情報ではなく、主体的に構造を理解することが必要こぶ。
その過程で、本質に近づくために、現象からチャンクを上げて自分に「なぜ」と投げかけることが必要こぶ。
はいはい、わかりましたよ〜
本論:「Task(1)」
-ゲコゲコ・ちゅんちゅん・モーモー(のどかな田舎の音)ー
気持ち悪い。。。二日酔いだ。。。
昨日は村長さんや町内会長さんが宴会を開いてくれた。
こぶこぶが田舎の恐ろしさばかりをいうからビビってたけど、この一か月、楽しいことしかない。
田舎に来てよかった~。
-ガシャーン(何かが割れる音)-
どうしたんだろう?
窓から外をのぞくと見知らぬおばあさんがすごい剣幕で怒鳴り散らしてる。
おそるおそる玄関に出て話を聞いてみると、おばあさんは隣に住んでいる人らしい。
隣といってもうちから100メートル先のところにある家なのだけれど。
なんでもおばあさんのところの畑の大根が抜かれたり、トマトが食べられたり、キュウリがかじられたりしているらしい。
畑を荒らしたのぼくのせいだとおもってるみたいだね 。
おばあさんの話をじっくりきいて、畑の状況を確認してきなよこぶ 。
本論:「Action(1)-①」
おばあさんの畑はおばあさんが言うようにひどく荒らされていた。
そして人間ではなく、獣の仕業のようだった。
実際に獣のものらしい足跡もあった。
そのせいでこぶこぶが疑われてたんだ。
仲のいい村役場の人にも聞いてみたのだけど、この地域は昔から猪が多く、補助金を使って数々の対策はとってきていた。
猪の柵や檻は用意しているし、10年前から被害は減少してきていた。
それなのにこの数ヶ月、被害はいたるところで見られるそうだ。
そしておばあさんについても教えてくれた。
おばあさんはもともと旦那さんと二人で住んでいたが旦那さんは2ヶ月前におなくなりになって、この1ヶ月は誰にも会わず、ずっと引きこもっていたらしい。
耳も遠いし、目も最近ではうんと見えなくなってきているから、村のみんなは心配しているのだそう。
そうだったんだね。おばあさんや村の人から色々話を聞いてきてくれてありがとうこぶ。
実際に現場の写真は撮ってきてくれたこぶか?
うん、撮ってきたよ。
Googleの画像検索で見てみたけど、猪の可能性が40%、鹿の可能性が30%、その他が30%か。
現状のデータでは規定することができないようこぶね。
もっと生息地の気候や活動的な時間などのデータをいれて、より条件を規定することで、正しい答えがでるようにテクノロジーと付き合っていかないといけないこぶね。
ここら辺は猪がおおいんだってば。
みんなも言ってるし、他の獣は猪にびびって近寄らないんだって。
ビビらないとしたらクマぐらいだけど、クマの足跡では絶対にないと思うよ 。
本論:「Action(1)-②」
いいからまずは現状把握だこぶ。
Amazonで売っている2980円のウェブカメラと、1200円の警報器を畑に設置した。これを8000円のタブレットで管理するこぶ。
ついでにスマート家電も導入しておばあさんの体温を感知して適切な温度にエアコンを設定できるようにして、快適にしてあげるこぶ。
そして、ウェアラブルウォッチをつけさせて、脈拍の異常があったら関係機関にアラートが通知されるように設定するこぶ。
ただでさえ落ち込んだり、興奮したりして体調が変化しやすいのだから、もしもの事態を防ぐためにスマート家電を活用しようこぶ。
ウェブカメラには次の日早速、犯人が映っていた。
それがびっくりしたことに鹿だったのだ。
猪用の柵は鹿にとっては簡単に超えられるハードルだったんだ。
本論:「Action(1)-③」
次は捕獲して、GPSをつけよう。どこからきているのかを探るんだ。
安全に捕獲できるように猟師さんと村役場の人に事情を説明してきてくれ。
単純にGPSをつけるために捕獲してくれと、説明するだけではダメだから、しっかりとおばあさんの現状、村の課題、ITと獣の被害対策に関して今後の日本の先端事例になることを説明して納得してもらってきてくれ。
いきなり要求レベルが高いよ〜
GPSをつけることによって、鹿がどこからきているのか、また、どのような時間帯に活動的なのかが明確になったこぶ。
鹿は南50kmの隣の山から北上してきているんだ。また、村に最近増え始めた農業の技能実習生の外国人が植えたマンゴーの木の近くに長くいる傾向があるこぶ。
これは仮説なんだけど、猪の対策に取り組んできた村のおかげで猪が弱ってきて、それを怖がらなくなった鹿が好物のマンゴーを求めてこの村までやってきたのではないかこぶ。
仮説を立てるときに客観と主観を混合しないことがとても大切だこぶ。
本論:「Result(1)」
こうして原因がわかったことで鹿への対策と猪を弱らせすぎないという対策を村役場ははじめた。
今後もなんとうかの猪と鹿にはGPSをつけて、動きをチェックすることで彼らが被害を拡大しないようにする。
つまり、彼らを敵として駆除するのではなく、共存することを村は選んだ。
グローバル化の影響や日本の働き手不足の影響で地方の人口分布も変わりつつある。
併せて気候変動によって今まで育たなかった植物が育ち、その植物を求めて動物の生息地が変化しているこぶ。
本論:「Task(2)」
畑の被害がなくなっておばあさんはとても喜んでいた。
僕もこれらの取り組みをTwitterで配信したらそれがバズって曲でぃぐったなら気分はDJ。
農村のDXの取り組みのアドバイザーとしての仕事も副業として得ることができた。
そんなときにおばあさんと会話している中で、おばあさんの生き甲斐について聞いた。
おばあさんはなくなったおじいさんが大切にしていた畑を形見だと思って、大切にしているらしい。
おばあさんはスマホを使いこなせてなかったからおじいさんとの思い出の動画はないし、目も耳も遠くなったから思い出を振り返ることができないと言っていた。
なんとかおばあさんを幸せにできないだろうか。
本論:「Task(2)-Action」
科学の最先端の話だけど、おじいさんとおばあさんが会話することは可能だこぶ。
どう言う仕組みかと言うと過去の写真をもとにホログラムをつくって、おばあさんは特殊な装置を装着し、脳に電気信号を直接送ってビジュアルを脳に映し出すようにする、そして骨伝導の仕組みを使って聴力がない人でも音を聞き取れるようにすることができる。
また、おじいさんの口癖や過去の出来事をインプットすることで、AIがデータを蓄積して、あたかも生きたおじいさんが直接返答してくれるように作り込むことができるこぶ。
これは会話しているうちにさらに学習していくし、より多くの人からのデータを入れた方が人間の多面性を投影することができる。
要はDXはテクノロジーで生き方そのものを変えることができるが、生き物のようなもの自体もつくれるってことだねこぶ。
本論:「Task(2)-Result」
そんなこともできるようになるんだね。死者が生き返るみたいでちょっとおっかない部分もあるけど、おばあさんに提案してみるよ。
こぶこぶ、おばあさんがぜひやってみたいって。
これにはお婆さんだけではなく、村の人に色々おじいさんに関してインタビューしないといけないよね。
しか対策の時と違って、難しいテーマだけど、わかりやすく噛み砕いたり、情熱を持って伝えることで、きっとわかってもらえるし、未来を示すこと、合理的な説明だけでなく、人情にも訴えかけることで、正解のない世界で、みんなが納得の行く形に導くこと、つまり、「これが私達の選ぶ道なんだよね」と同じ認識を持たせるのが大切なんだよね。
それには普段から信頼してもらうような行動に努めることも必要だね。
本論:「Result」
こうして、色々な出来事を解決しながら、ご主人と僕の生活はうまくいくようになっていったこぶ。
結論への導入
-チュンチュン(朝の鳥のさえずり)-
あー、よく寝た!
よーし!いろいろ軌道に乗ってきたし、今日も良い一日になりそうだ。
こぶこぶ、まずは畑の野菜の収穫ロボットのプログラムを更新しよう。・・・こぶこぶ?・・こぶこぶ!・・・どこへ行ってしまったんだろう。
・・・あれ?なんかメッセージが届いているぞ?
ご主人へ。・・・突然いなくなってごめんこぶ。
でも、ご主人には、もう僕の助けはいらないこぶ。
ご主人の充実した人生を見ていたら、僕にも夢ができたんだこぶ!
昔のご主人のようなダメダメな人を、もっとたくさん助けて、世界をより良くしていきたいこぶ。
だから僕は旅立つことにしたんだこぶよ。
今までありがとうこぶ。
自分の力を信じて、僕がいなくなっても幸せに暮らしてほしいこぶ。
結論
-場面が変わる効果音-
あれから20年。もう2050年だ。僕も、もうすぐ60歳かぁ。
今日はこぶこぶに向けて、手紙を書いたんだ。
紙にペンで文字を書くなんて何年かぶりだけど、いちばん気持ちが伝わると思う。
みんなにも聞いてほしい。
<手紙>
こぶこぶへ
久しぶりだね。
君がいなくなってから、たくさんのトラブルがあったけど、一緒に過ごした日々を、ひとつひとつ思い出しながら乗り越えてきたよ。
あの時、こぶこぶが農村に移住する大変さを語ってくれたなぁ。
あれは、ほかの地域で実際に起こっていたトラブルをもとに、自分がどうすれば良いのか、どう考えれば良いのかを「読み解く力」が大切だということを教えてくれていたんだなぁ。
おばあさんの悩みは、IoT技術とICT技術を導入して解決してあげたなぁ。
あれは、どうすれば問題が解決できるのか考えること、つまり、「仮説を設定する力」が、不可欠なことを教えてくれていたんだよね?
仮説を設定するとき、主観と客観を混同しないことも大切なポイントだったよね。
そして、問題解決のために考えた仮説のいくつかのうち、環境に合ったものを決めたり、現実的に可能なものを選択すること。
この、「規定する力」もまた、必要不可欠だったなぁ。
新しいことに反対の人たちを説得できたのも本当によかった。
一人きりで最先端の技術を使って、農業を成功させたとしても、ほかの人がいなくなって、この村は無くなっていたんじゃないかな。コミュニケーションを取りながら周りを「巻き込む力」って、本当に大切だよ。
もちろん忘れちゃいけないのは、「実行する力」だ。何か決めた後、実現しなければ、結局何も変わらない。
みんなが納得して、これでいいんだ!って思ってもらえるところまでが実行する力だってことを学んだよ。
そして、実行して、新しい問題が浮かび上がったら、またこの5つの力で乗り越えるんだ。
いつか教えてくれたチャンクという考え方は、すべての力を発揮する上で、本当に役に立ったよ!!あの言葉が、僕のインスタでバズって、だい流行して、流行語大賞を受賞したんだ。
そんなわけで、これから先もきっとトラブルはあるだろうけど、僕は大丈夫。
僕にとっては、DXって、ただ新しい技術を取り入れていくことじゃなくて、自分や周りの人を豊かにして、持続可能な人生にすること、つまり、幸せに生きていく力そのものだったんだ。
それに気づかせてくれて、本当にありがとう。
こぶこぶ、君も、君らしく生きていってね。
-ウィ~ン(ロボットの効果音)-
今は西暦2300年。
もう農業なんて誰もやっていないこぶ。
農業は、都心の高層ビルの中だけで、ロボットによって全自動化されているこぶよ。
社会、経済、地球環境、パートナーシップ ・・・。
時代によって、いろんなものが変わっていく。
それによって、譲れないもの、本当に大切にしたいものがあぶりだされていく。
2300年のこの世界は、ご主人にとっての幸せな世界ではないと思うこぶ。
でも、2300年の人々は、持続可能な生活や幸せを求めて、農業を、都心だけですることにしたこぶ。
君たちにとっての幸せって、なにこぶか?
DXは、その実現のために、どんな風に役に立つこぶか?
今日の僕の話が、ビットゼミのみんなに幸せをもたらすと嬉しいこぶ。
それじゃあ、いつかの未来でまた逢う日まで。
これで、チームハニーズの発表はおしまいこぶっ!
さようならこぶぅ~!
-ウィ~ン(ロボットの効果音)でおしまい-
2.物語の寓意
物語なので受け取り方も三者三様ありそうですが、こぶこぶとともに過ごした期間は訓練期間のメタファーで、ココで学ぶべきことを表現されたものと吉田は解釈しました。
DXに必要な5つのチカラ
- 状況の把握: 状況や問題を把握して、自分のすべきことを「読み解く力」
- 仮説の設定: 把握できた問題に対して、効果を生む仮説を「考え抜く力」
- 方策の決定: 仮説のうち、現実的に最適なものを規定して「選び取る力」
- 意見の調整: 関係者のコンセンサスを得て、協力者にする「巻き込む力」
- 方策の実行: 選択した方策を、協力者らと一緒に最後まで「やり抜く力」
【DX:幸せに生きていく力】
新しい技術を取り入れて自分や周りの人を豊かにして、
持続可能な人生にすること
これらの認識を前提にすれば、より充実した訓練期間と、より充実した職業人生を創っていくことができると思いました。
ユーモアでもって突き抜ける
イノベーションの要素を含むDXについて学んでいくコースにあって、自由に成果物を創ろうとする以下の姿勢は、参加者全員の訓練成果を飛躍的に高めると思います。
- 課題の要諦はキチンと押さえる
- 良い意味でみなの予想を裏切る
- 使える技術をトコトン活用する
- 自由かつ想像力豊かに発想する
- ノリノリで自分も他人も楽しむ
直接の生命活動に関係ないことをバカバカしいと思わず「熱中できる」のも人間ならでは。「ユーモア:楽しむチカラ」あってこそで、【人間力】の一部を見た気がしました。
このワークを出題した吉田にとって、想定の範囲を遥かに超えたユニークな発表に、ますますこの先の訓練が楽しみになりました。