職業レポート⑤:Microsoft 本社勤務、よしだたいきさんの講義『市民開発者になるためには』

隅田です。
すっかり空気の味は「秋」ですね。

前回の職業レポートに引き続き、第5回です。
今回はなんと、オンラインにて よしだたいき さんにご講演いただきました。現地時間にして0時過ぎ…。それも70枚にも渡るスライドを作成していただきました。

101期生だった頃は彼の話を生で聞いたことがなかったので、この日を心待ちにしていました。そんな授業の目的は以下のとおりです。

Power Platform、Power Appsと言えばこの方。「黄色いひよこ」こと吉田 大貴さんです。ご紹介いたしました吉田の備忘録ほか、多くのコミュニティやチャンネルをお持ちです(※記事下部に付記)
 現在活躍しているPower Appsユーザーの殆どが、大貴さんとの出会いをきっかけにされたと言っても過言ではありません。我々市民開発者の卵に期待すること、今後の大貴さんやPower Appsのことなど、色々聞いてみましょう!

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吉田大貴(よしだたいき)さん

さて、この方は、日本における Power Platform 第一人者と言って異論を呈する人はいないでしょう。現在は、米国 Microsoft にて、Power Platform のサポートチームで仕事をしておられます。

界隈では、高卒で GAFAM 1 に行った稀有な方としても知られていますね。

なぜ、マックの高卒バイトがマイクロソフト本社にヘッドハンティングされたか 時給800円から年収20倍アップ | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

見出しは華やかですが、ここに到達するには常人離れの努力と意志がなければ困難だったと言えるでしょう。断言しますが、単に英語ができたから、IT技術があったから、ではありません。

そんな方が、このビットゼミでどのような言葉をかけてくださったのか、記事としてまとめたいと思います。

授業:市民開発者になるためには

市民開発者は、業種業界を問わず世界中で活躍する人材です。そこにいる色んな現場の人たちが「変革」を起こそうと考えています。しかし、そう簡単に変革を起こせるものなら誰も苦労しません。

では、どういうマインドセット・スキルセットで市民開発者になるべく学習すれば良いのでしょうか。授業内容は大きく分けて3つでした。各項目ごとに整理したいと思っています。

市民開発者に求められるスキルと心得

今までにない新しいものを取り入れることは、自他ともにエネルギーを要します。つまり、変革を起こす側と受け入れる側の双方が壁を乗り越えなければなりません。ということで、この壁を乗り越える方法を教えていただきました。以下に(私見も含め)箇条でまとめておきます。

  • 探索
    発表して共有する時間を設けることが必要です。例えば、改革したいと考えている人たちで集まり、ハッカソン 2 を開催して「何が課題なのか」を多くの人々と情報を共有することが大切です。特に、アプリは、作っただけで満足せず、必ず「評価」を行い、可能であればフィードバックを得るように心がけましょう。
  • 機会
    「変革=チャンス」であると捉えるようにしましょう。今の部署で業務効率化をし、もっと大切な別の仕事に時間を使えるようになるのです。
  • 使命感
    「自分の仕事ではない」という考え方から脱却する必要があります。まずはどんな仕事でもやってみる。それを自己投資と捉えてやることで成長に繋がっていきます。
  • 価値
    この「効率化」に時間を費やすほどの価値がなければなりません。「アプリを作りたい」というものが目的になってしまっては、せっかく手に入れた「業務効率化」のチャンスも、アプリを使ってもらえないということが起こったり、逆に業務効率化してしまったり…といった惨事に繋がりかねません。ツールを使うこと以上に、時間を費やす価値があることを示していく必要があります
  • 評価
    会社によっては表彰・賞金制度を導入するところも実例としてあるようです。DX化を表彰してもらう…というのは難しいかもしれませんが、まずは「会社に貢献した」といった表彰を目的としても良いでしょう。そうすることで、本当にやりたかったDX化を上役に通しやすくなるかもしれません。場合によっては、その人の職種すら変えてしまうこともあるかもしれません。コツコツと取り組みましょう。
  • 支援
    自分だけが作るという立場にならないようにしなければなりません。理想的な組織は、以下の図に示したとおりです。

従来の組織構造

目指したい組織構造

あらゆるデータは現場から来ます。末端の従業員、IT部門、そして上層部が手を取ることによってより良い仕事につながっていくのですね。

職業人生を通じた学びの共有

ビル・ゲイツのようにITで世界を変えたい

ここからは、たいきさんが仕事を通して得た「学び」を共有していただきました。これはなかなか聞くことのできないレアなお話です。自身、脳汁がドバドバ出ていたのを思い出します。

持論1 夢はでかく、でも実現できる範囲で

夢は、あまりにも小さいものであると簡単に実現できてしまいます。しかし、あまりにも大き過ぎると実現できません。ここで大切なのは、実現できる範囲での大きな夢を持つことだと言います。5年先、10年先、という単位での目標を定め、それに向けて動くことが1つ目の「学び」です。

彼は、ビル・ゲイツのようにITで世界を変えたいと考え、2009年に Imperial College London の コンピューター科学学科修士プログラムへ合格を果たしました。しかし、大学を断念せざるを得ない不幸があり、就職氷河期の煽りも受け、マクドナルドで働くことになりました。

この時点で「ビル・ゲイツのようにITで世界を変える」という夢からは程遠いものとなってしまいました。しかし、彼は、一旦、頭を切り替えて目の前の仕事を一生懸命やることを決めました。

次の持論2に繋がっていきますが、まずは自分にできる(与えられた)仕事を徹底する。この切り替えが、現在の地位を確立した契機だったのかもしれません。

持論2 与えられた機会は後悔しないように100%の力を出す

「学歴なし」というハンデでも実力で勝負したい。

この言葉はとても印象的でした。「印象的」というのは、ふんわりとした言葉になっていますが、絶対に負けない、絶対に結果を出す、そんな意志が伝わってきました。

それが、マクドナルド時代、7ヶ月という驚異的な速度でバイトマネージャーの地位を確立したマインドセットなのだと思います。

どの職場にいても、その職場での仕事を一生懸命やることで道を拓いていく。これは、私も心がけていることです(できているのかな)

持論3 あまり知らない初歩的な内容でも、学んだことをアウトプットすれば自分の理解も深まる

アウトプットの場合、自分だけが理解できているという状態では不十分です。その理解の過程で他人が理解するための言語に変換しないといけません。この前提に立った学習は少し難度が高いのですがモチベーション維持もしつつ最大限の効果を得られます。

アウトプットの場は、何もイベント登壇でなければダメというわけではなく、隣同士での共有だったり、勉強会だったり、ブログだったり、Twitterだったりどの媒体を使っても構わないとのことです。

アウトプットを前提としたインプットを心がけておけば、良質の知識がどんどん蓄えられていきます。無駄になる知識というものはなく、全く無関係だった知識が何かのきっかけで繋がる瞬間があります。彼の場合、元々の英語能力に、IT、Office 365、ERPの知識が組み合わさって競争力が向上したそうです。

持論4 夢は常に更新し続け、達成したら必ず次がある状態にする

夢を更新し続ける大切さを教えていただきました。彼は、マイクロソフトに就職したらそれで終わりとするのではなく、今度はPower Platformのようなツールを世界中に広めたいという気持ちで仕事をしておられます。

現在は、上司に志願して技術開発に携わるPower CATチームに異動を果たし、よりチャレンジングな地位での仕事に取り組んでおられます。我々も、就職をゴールにするのではなく、その職場で今度は何を目標とするのかを考えなければなりませんね。

持論5 努力+成果=評価に直結、直結しなければ、客観的に分析する

努力が成果に見合わないことがあれば、一度冷静になって分析する必要があります。彼の場合、転職するなどして環境を変え、自分が最も心地よく働ける場所であったり、正当な評価を得られる環境で働くことを意識されています。

持論6 自分を第一にする(家族を第一にする)

夢に向かって走り続けていれば、必ず、周囲からネガティブなことを言われることがあります。「そんなの無理だよ」や「辞めた方がいいよ」と言われ続けると気持ちも病んでしまいます。

彼の場合、物理学者 Stephen Hawking の “However difficult life may seem, there is always something you can do, and succeed at. It matters that you don’t just give up.” という言葉を大切にされているとのことです。

どんなに困難な人生でも、必ずできることがあり成功する。大切なのは諦めないこと。

拙訳

今後の Power Platform の展開

以上を踏まえて、今後 Microsoft がどのように Power Platformを展開しようとしているのか…といった最新情報をお話いただきました。

要約すると、現在、Microsoft が最も力を入れているというこのツールは、近い将来、募集要項で Excel や Word のスキルを求められるのと同じような立場になっている可能性がある…と、大貴さんはおっしゃっています。

広島ではまだまだ事例が少ないですが、次第に増えてくることが予想されます。これから就職する環境がこういったツールを使わなかったとしても、どこかのタイミングで必要とされるタイミングが訪れます。

よしだたいき

みなさんが勉強していることは必ずこれから先の人生で役に立ちます。諦めずに夢を追いかけてがんばってください。

これほど、事実や時代背景に裏付けられた激励はなかったのではないでしょうか。かくいう私も、Power Platform の学習に対するネガティブな気持ちが払拭されたように思います。

この度はお忙しい中ありがとうございました。
くれぐれも、お身体に気をつけてください。

資料

  1. 主要 IT 企業である Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft の頭文字語
  2. ハック(hack)とマラソン(marathon)を組み合わせた語。 ソフトウェア開発の関係者が、 短期間に集中的に開発作業を行うイベントを指す。
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