職業レポート⑩:Microsoft MVP 2022 のAkiraさんに半日の出前授業をしていただきました。

隅田です。
前回に引き続き、職業レポート第10回目です。

今回は Microsoft MVP 2022受賞の Akira さんにお越しいただき、なんと半日も、授業していただきました。序盤2時限分をアプリ作成演習、残り1時限分をAkiraさんの職業レポート、という形で進行しました。

今月はPower Platform界隈の著名人に多くご登壇いただきましたが、この度は実際に足を運んでいただけるということで、103期生以上に筆者(隅田)の方が心待ちにしていた日だったかもしれません。

アプリ作成演習

現在、103期生には卒業制作のアプリ作成課題に取り組んでいただいております。三人一組のチームで個人の制作に取り組んでいただいており、現在の進捗であったりお悩み相談であったりがしやすいように授業が計画されています。

この度、Akiraさんにお越しいただくということで、そのチームの中から代表で1名を選抜してもらい、Akiraさんから直接指導してもらえる時間を設けました。贅沢な!

訓練生A

同窓会アプリを作っているんですけど、赤線(=エラー)が全然消えてくれなくて、何日も同じところで悩んでまして~…。

Akira

あ、ココ。 “.Text” 抜けてるからだと思いますよ

訓練生A

一瞬で何日もの悩みが解決しました~!

Akira

デバッグは一つずつ(確実に)やっていきましょう!

訓練生B

今ビジュアルノベルゲームを作っていまして…。選択肢が表示される時と表示されない時があるんですよね~。

Akira

これ変数使わなくてもイケるで。
要するに、やりたいことってこういうことでしょ?

訓練生B

は、はえ~~~~~

…といった具合で、チームの代表が作っているアプリの中で困っている箇所を診ていただき、それに対して回答をいただく時間を過ごしました。いい勉強になりました。

職業レポート

市民開発者になるには?

Akiraさんについて

この自己紹介、改めて「何者なんだ」という気持ちになります。「大型トレーラーや重機を振り回せる情シス」は日本中を探してもそう数はいない気がします。

現在は、主に、中小企業の情シスサポートやPower Platformを使った業務改善の支援を行っていますが、上のご経歴の他にも(趣味で)塾講師や家庭教師、そしてPower Platform系のYouTubeも運営されています。ここ最近は、登壇活動やキャリアコンサルティングなどの依頼も増えてきているとのことです。

芯の通った人で、隅田が信用している人のひとりです。他人の見えないところで努力され、イベント登壇ではアツい話をしてくださり、後進者教育でも力強くバックアップしてくださります。

そんなAkiraさんが経験してきた職業である「情シス」と「設計士」の観点から「ものづくり」に対する心構えを語っていただき、それを踏まえた上で『市民開発者になるには?』というテーマで授業していただきました。

情シスとしての市民開発者

私の抱いていた情報システム部(以下、情シス)のイメージは、これまで「サーバーやネットワークを構築する人」というイメージでしたが、その仕事はほんの一部で、実際の業務は、上の画像のように多岐に渡ります。

どの項目も重要ですが、Akiraさんは、特に⑥の内製提案、作成、教育が重要であると強調します。その理由は、社会に以下のような問題があるからです。

  1. エンジニア不足
  2. 独自業務の多さ
  3. 要件定義の複雑さ

この3点のキーワードを見て鋭い方は気付いたでしょう。

そう、市民開発者の登場です。りなたむさんの授業でもお話がありましたが、世界的に開発の民主化が進んでいます。これまでは専門家に全て依頼していたことを、その企業の業務担当者も担えるようになるような時代に備えなければなりません。

また、市民開発者は、独自業務の効率化を行っていくにあたり、SaaS 1に業務を合わせることが可能でない場合や、ベンダーへの開発費を捻出できない場合、及び、そもそもベンダーにお願いするほどの仕組みなのか…といった判断をしていくために必要な存在です。

そして、市民開発者は、要件定義において心強い存在です。要件定義とは、システム開発をする前段階で、必要な機能やユーザーからの要求を整理してまとめていく作業のことです。

もともとプロの業務担当者である彼らは、開発ベンダー以上に、その必要な機能や現場のニーズを熟知しています。依頼側(ユーザー)と開発者側(ベンダー)で起こりがちな「不一致」を、ローコード・ノーコードツールで業務担当者が仲介し、尚且つ、コミュニケーションコスト及び開発コストも従来の開発よりも小さく済むことから注目が集まっています。

その観点から、内製エンジニアを増やしていくことが重要であると考えられます。

DX化を推進する動きが活発化している一方で深刻な人材不足に拍車がかかっており、情シスの仕事はこれまで以上に増えてきました。きちんと「仕組み」を学習している人も減少傾向にあります。Akiraさんは(市民開発者としてすぐに活躍できなくても)ローコード・ノーコードツールの学習で開発の基礎知識を身につけておくことの重要性を語っておられました。

設計職としての市民開発者

ここからは「なぜ設計職があるのか」を考えました。

103期生と同様、私も設計職に対するイメージは「モノを形にするために準備する人」だったのですが、より踏み込んだ「誰が、何を叶えたくて設計するのか」という問いには閉口せざるを得ませんでした。

確かに、お客さんの要望を形にするために設計職があるのは間違いないのですが、問題は、そもそも「なぜ形にしたいのか」という点であり、その部分を考える必要があるのだそうです。

そこで「なるほど」と思ったのですが、お客さんは「モノ」が欲しいのではなく「改善」が欲しいという視点でした。つまり、改善方法が分からない人のために設計職があるというのです。

そもそもDXとは、iPadを導入したり、物理印鑑をなくして電子印を導入したり、書類をPDF化したりすることを指す言葉ではありませんし、RPAツールを契約したことを指しているわけでもありません。

DXとはデジタルの力を活用した「変革」であり、経営戦略や事業をツールを駆使してビジネスモデルを確立することを指します。

設計職とは、単にモノ作りの前段階にある人ではありません。言い換えると、市民開発者は、単に電子ツールを導入する人ではありません。組織横断や全体業務工程の電子化を用いて、経営戦略や事業を変革するような人を指しているといえます。

この視点に立てば、Power Platformに拘泥する必要はありません。繰り返しになりますが、その企業にとって最適なツールを考えて導入し、それを駆使して変革を進めていくことが市民開発者だからです。

「ものづくり」の心構え

ここからは、予め103期生から募った質問に回答していただく形で、モノづくりの心構えを教えていただきました。

中でも、103期生の心を打っていたのは「行き詰まったりすると『途中で投げ出したい』『妥協しよう』とばかり思ってしまうのですが、そうせずに続けることができた理由は何ですか?」という質問に対する回答でした。

習慣は第二の天性なり

古舘 春一 著『ハイキュー!』(cited)

また、Akiraさんはその習慣の中に「アウトプット」を取り入れることの重要性を説きます。

「モノ」とは誰かに見つけられて初めてそこに「存在」しはじめる

ろびこ 著『となりの怪物くん』(cited)

言い換えると「発表しなければ何も作っていないのと同じ」ということです。どんなモノでもよいので、SNSなど色んな人の目に触れる場所で公表し、モノに命を吹き込んであげて欲しいですね。

資料

  1. Software as a Serviceの略称。必要な機能を必要なだけサービスとして利用できるようにしたソフトウェア(提供形態)のことを指す。
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